第4回 「プロメア」
ちょっと何日か間が開きましたが、今やっと映画を1本観る程度に気力体力の余裕を持てたのでいくぞ。
あと、実写→アニメ→実写、ときてのアニメ作品だが、そういうの気にしないで。たまたまです。
というわけで、今回はこれ。
夏場に観るにふさわしい1本。
「プロメア」です。
もともと公開当時から気にはなってたんだけど、タイミングが合わず劇場では観られずじまい。ご縁がなかったということか、と諦めてたところ、先日いきなり尼損プライムに! ついったで相互のフォロワ様が大好きな作品ということもあるし、何より作品自体がイロイロ冒険や挑戦している様子だったので、これ幸いと視聴。
いやあ、観るほどにコレはクセになるし、たぶん劇場で観てたら「マッドマックス フューリー・ロード」の二の舞になってたなと噛み締めました。動画配信で、デスクトップで観てもすでに「よっしゃまた観るぞい」になってるからね。「MMFR」と同様、快感原則をこれでもかと刺激し満たす、宮崎駿監督いうところの「お客さんをお腹いっぱい楽しませてあげる」映画ですね。
未見の方のために要注意事項をあげると、全編最初から最後までクライマックス。体力があるときに、ひと息に楽しむ映画なので、なんかのついでとかではなく、この映画にちゃんと向き合うのだとコンディションを整えてから観ましょう。万全の態勢でもって堂々お相手する、そういう作品のうちの1本だと思います。
画面の色調やメカのデザインはポップだし、登場する女の子も露出はあっても爽やか。
露出云々は、メインヒロインのアイナを見ればお分かりいただけるかと思います。これだけお腹や脚が出ていても健康的で嫌味がないよね。
物語の重要なモチーフの一つ、炎もこの通りのカラフルさ。
で、冒頭にいきなりぶっ放されたこれが、映画の本質を語っていました。
隙あらば見得を切る主人公・ガロ君。
冒頭のこれを見て「ああ、この映画は歌舞伎だな」と思ったら、やっぱり最後まで歌舞伎だった。ちゃんと歌舞伎のフォーマットに乗っていた。
今の若い子が抵抗なく気軽に楽しめるスタイルとルックスにした歌舞伎。それが「プロメア」という映画。
歌舞伎というと、伝統芸能でチケットも高くて、そもそも舞台に足を運ぶのにそれなりの身なりでないといけないだろうとか、すごく敷居が高いもののように思われがちですが、実際はこのぐらいカジュアルに楽しんだって問題ないものです。ジーンズにスニーカーとかで観に行って、何の支障もなかったぞ。あと、日本文化専攻と思しき若者が結構ラフな格好で舞台観たりもしてるから無問題だ。
だけど、そういう敷居の高さがイメージとして着いちゃってるんだけど、そのイメージを取っ払って本質だけにして、これから観に来てほしい若い子たちに届きやすい衣装をつけた結果がこれ。
キャラクターがまず判りやすいですよね。
曲がったことが大嫌い、ちょっとおバカでも憎めなくて、目の前で虐げられてる弱いものに味方するガロ君。
持って生まれた体質から差別され、同じ立場の仲間を勇気付けたくて立ち上がった、それでも非道は行わないリオ君。
そして村を焼く堺雅人。
じゃなかった、裏ではギットギトの野望を持ちながら、それはおくびにも出さず行政のトップとして善きリーダーに徹して見せるクレイ。
このキャラクターの関係が、歌舞伎の必須条件であるどんでん返しを見せる要素であると同時に、為政者のヤバさを効果的に見せるために、うまいこと配されているんですよね。
為政者がいかにヤバいのかは、この映画のクライマックス、タッグを組んだガロ君リオ君に対峙するあのロボを見ていただくとお分かりいただけるかと。
あまり語るとネタバラシになってしまうし、私「聖⭐︎おにいさん」のイエスばりにネタバラシは勘弁してほしい派なので、本質的なことだけにしておきますが、とにかくこのアニメは歌舞伎だと思ってお楽しみいただくといいかなと。構造が歌舞伎だった。
他には、あんまりアニメにありがちな音楽の使い方とは一線を画していて、そういうところでもちょっと冒険していますね。もっとドラマに寄ってるというか。あまりアニメでは使わなさそうな挿入曲が入ったりしますが、この作品のテンポやビジュアルにはハマってます。
キャストも声優さんが脇を固め、主役クラスの3人は松山ケンイチ、早乙女太一、堺雅人と、アニメとは縁の薄い俳優さんを呼んでますが、全然ご本人の顔がチラつかなかったのすげえな。これができる俳優さん、少ないんですよね。なまじ売れていると逆に、声だけの仕事をされるとき、ご本人の顔が浮かんじゃって映画に集中できなくなる。他にこれができるのって、竹中直人とか、ちょっと前に残念ながら亡くなられた根津甚八さんとか、そのぐらいじゃないのか。あとは「スカイ・クロラ」のメインキャラ4人の声を当てていた菊池凛子・加瀬亮・谷原章介・栗山千明。このぐらいしか知らない。そのぐらいすごい。
まあ、映画としては「ダレ場がない」という点はあるものの、これ、言っちゃえば歌舞伎を映画にしてるだけだからね。映画じゃなく歌舞伎のフォーマットだから、シネマ歌舞伎に近いわけで、そりゃあなくてもおかしくないわなあ。
なので、この映画の観方として一番理想的なのは、クッッソ暑い日に涼しい映画館に入って、この映画を観て外に出ると、一番暑い時間帯でカーッと太陽が照りつける、という感じかしら。
まあ映画館じゃなくても、自宅で動画配信でも十分に堪能できる作品ですが。
たぶん夏場にリバイバル上映とかやられたら行っちゃうかも。
まだ観てないという方、今なら尼損プライムに入ってるから。観て。お願い。
そして冒頭のガロ君のパワあるお言葉「燃えていいのは魂だけ」にやられてほしい。
観て損はないから。お願い。観ろ。
ついに強制じみてきたところで、今回は終了。次回をお楽しみに。
あんまり間を開けないように気をつけます。