名画座テアトル犬小屋

雑種犬が観た映画について書く場所。観たことのない映画で遊んだり、何度も観た映画についてしつこく語ったりするめんどくせえ、洗ってない犬の臭いがするブログ。

第8回 「オールド・ガード」

「ヴェノム」を観た流れで、そのままひと息に観てしまいましが、あとから気が付いた。「ヴェノム」主演はトム・ハーディ。この作品は主演がシャーリーズ・セロン姐さん。

MMFRか!

ということで、今回はこれだ。

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「オールド・ガード」。基本設定に軽くスーパーナチュラルを効かせたアクション映画です。

 

アフガンに派遣されていた海兵隊員・ナイルは、作戦中に死亡。したはずが生き返ってしまいます。小隊の仲間からは訝しがられ、部隊内でも噂になり始めていたところで、シャーリーズ・セロン演じるアンディが率いる不死者のチームに成り行きで合流。同じ境遇で何百年も生きる仲間と出会い、こうしてチームで戦うに至る経緯を聞いて、自分の体の変化に戸惑いながらも向き合おうとし始めますが、チームは不死者の体質を研究しようとする医療メーカーのCEOに狙われていた…。

ざっとあらすじをご紹介しましたが、見どころがたくさんあって、さすがネトフリ独占配信作品。「アイリッシュマン」と同様、ぬるいことはしてません。

演技はもちろん、アクションやらせても最高すぎるシャーリーズ姐さんをヒロインにキャスティングしたスタッフ、象印賞を進呈。

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冒頭でいきなりオーバーキルに遭っても即復活。

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アクションもこの通り。カックイイという褒め言葉が大前提の当たり前にしかならないわ。

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ナイルを仲間に加えたいとは思うものの、成り行きで同行させてはいるものの、それでもナイル自身が納得して選択できるよう、仲間や自分のことについてチームの皆が語り、道中「帰りたい」と言った彼女の気持ちを思ってあえて別れることを決めもする。

そうやって自分が選んだ道を尊重してくれたことに気がついたからこそ、別れてからチームが嵌められたことに気づいて、ナイルはアンディを助けねばと思い立った。選択肢は一つしかないからこそ、事実に向き合って納得できるまでの時間をくれた、自分が考えて決めることを大事にしてくれた、その思いに殉じようと考えて、やっとナイルは吹っ切れたんですね。ここからの彼女の戦い方が変わるのもポイント。

チームを裏切って罠を仕掛けたエージェントのところへ乗り込むと、そこにはやはり依頼主に裏切られて利用され、チームを嵌めたことを後悔するエージェントの姿が。

彼がチームを裏切った理由は、人情としてわからなくはない。ただ、やたらときれいで耳触りのいいことばかり並べる奴を、何で疑わなかったんだとは思うよ。世のため人のため、を何の利益もなくやる人間ほど胡散臭いものはないんだよ。「いいことをすると気持ちがいいんだ」だったら、快感を得るという利益を受けているから、まあそんなものかとも思うんだけど、そういう「私はこれをもらえます」というものをはっきり言わずに、やたらと役に立つためになる、しか言わない奴は、ろくでもない厄ネタなんですよ。

身を隠し移動する中で、アンディとチームのブレーン・ブッカーの過去が語られます。

アンディは魔女狩りの時代に助けられなかった親友の行方を捜し続けたものの、見つけられず諦めてしまった後悔を、ブッカーは不死になり歳を取ることもできなくなりながら、家族を捨てられずにいたものの、子供や孫が先に年老いて、自分も死なない体にしてもらえないかと縋られてもなす術がなく、愛する家族に恨まれながら別れた後悔を、それぞれに背負っていました。自力ではどうにもならない後悔です。質は違えど誰でもが同じように、どうにもならないことを後悔しながら背負って生きるけれど、彼らはいつ体の再生が止まって死ぬのかわからない、千年以上も後悔と一緒に、死ねない以上は生きざるを得ないんです。いつ自分が死ぬのかはわからないのに、致命傷を受けたときの激痛と心の痛みは常に付き纏う。そんなの、仲間がいなければ耐えられないでしょう。傷を舐め合うなんて言ってしまうと惨めな風に聞こえますが、人にはそんな風に支え合える相手が必要なんですよ。

「自分の歳なんてわからない」という、呆れるほど長く生きてきたアンディの正体については、この作品が観られる環境が整っているならぜひご覧ください。チームは自分たちの行動が本当に世の中に意味をなしているのか、役に立っているのかと疑問に思いながらも、他にやれることがあるでなし、目の前で虐げられている弱い者や子供を助けていますが、そんな彼らの行いが何を生んでいたのかも、見届けていただきたい。アンディのチームについて調べ上げたエージェントからそれを聞いて、ナイルは真の意味で新たなメンバーになる決心が固まります。

家族のもとに帰りたいと思うけれど、帰ったときに何が起こるのかはブッカーが教えてくれた。どう生きていけばいいのかは、アンディが道を作ってくれた。

腹が決まったナイルの戦い方が、ここで不死者の仲間たちと同じものに変わるのがちょっと感動的でした。傷を負っても体が勝手に回復し、致命傷すら治してしまう不死者にしてみれば、捨て身の戦闘はやけではなくスタイルの一つでしかない。

戦闘スタイルの変化でキャラクターの心境の変化を見せるってのも、なかなか面白いですね。

 

チームをつけ狙う悪人は滅ぼされ、依頼人がチームの功績に敬意を払うどころか非礼を働いたことにショックを受け、後悔していたエージェントが仕事の周旋を引き受けることになって、物語は終わりますが、ラストのワンシーンで続編を匂わせているのが気になる。来るの? ねえ続編来るの? 来るならちょっと正座で全裸待機以外の選択肢ないよ?

やるなら事前に公表してくださいネトフリさん。心の準備しておくので。あとチームのキャストは変えないでお願い。

 

なんかアクションが続いちゃったので、次はもう少し気楽に観られるものを持ってくるかな。

というわけで、無意識にMMFRつながりで2本キメましたが、次は関係ないところから持ってきてやるのでお楽しみに。