名画座テアトル犬小屋

雑種犬が観た映画について書く場所。観たことのない映画で遊んだり、何度も観た映画についてしつこく語ったりするめんどくせえ、洗ってない犬の臭いがするブログ。

第11回 「スタンド・バイ・ミー」

ぎっくり腰だいぶよくなりました。

で、何観ようかなと動画配信サイトを徘徊した結果、今日はこれ。

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スタンド・バイ・ミー」。

ドラえもんじゃない。あっちは忘れてくれ。青い猫型ロボットはどうでもいい。

主人公の子供たち4人のうちのひとりを演じてたリバー・フェニックスは死んじゃったし、その弟はええおっさんになっちゃったけど、いまだに残ってるよね。この映画。

こんな名作が原作はスティーブン・キングってのも意外だけど、原作の短編のタイトルが「死体」ってのは、いくら何でももっさりしすぎもいいところだろ。

お話は原作者の実体験、12歳の夏の出来事だそうですが、子供たちは観ている誰しもが共感できる要素を持っていて、自分の子供の頃を思い出したりもする、そんな映画です。

主人公のゴーディは優等生で、両親の自慢の種であり、自分をかわいがってくれていた兄さんを事故で亡くし、ただでさえ親に無視されていたところに更に家庭での居場所をなくしている子で、友達も家庭に問題を抱えて、兄貴がぐれていたり酒乱の親父に殴られるのが日常だったりする子で、居場所のない子供たちが肩寄せ合って支え合っているわけです。

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で、そんなある日、仲間内でもちょっと間が抜けていて足を引っ張りがちだけど、悪知恵もないぶん憎めないバーンが「死体見に行こう」と持ちかけることで、子供だけの小旅行が始まります。この道中で、各々が来し方行く末の自分の道に何となく向き合ったり、いろんなものを乗り越える覚悟の、最初の一つを固めたりするわけですが、ゴーディの親友・クリスが、兄貴がぐれてたり親がろくでなしだったりするせいで苦労している分、仲間内では一番早く大人にならざるを得なかった子で、だからすげえ仲間思いのいい子なんだ。ゴーディに「お前の小説すげえんだから絶対書け」と励ましたり、しょっちゅう親父に殴られているからか万事に投げやりなテディが列車相手にチキンレースしようとすると強引に線路から引き摺り下ろしたり、バーンのことも邪険にはせず、とね、お前は兄ちゃんか! とにかくそのぐらい大人なんだけど、だからこそその分抱えてるものがでかいことを窺わせる、大人から見ると気がかりな子なんですわ。兄ちゃんが死んで親に愛されてないと悟るぐらい賢いゴーディと、この子はすげえ心配な子。

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子供たちは線路沿いに目的の森へ向かって歩く間、夜に焚き火を囲んでゴーディが自作を語り聞かせるんだけど、何でこの路線を固持しなかったスティーブン・キング…。今書いてるもんよりこっちの方が面白いぞ…。

一方で、クリスの兄貴・アイボールはいつもつるんで遊んでる不良のリーダー・エースと一緒に、退屈しのぎの遊びの一つで死体探しを始めますが、兄貴は兄貴で「付き合ってる女の子がやらせてくれねえ」とか、まあ、クリスよりもうちょっと大きくなると悩みの性質が変わるよなと。ただ、弟の方が賢いぶん、悩みと言ってもその程度で、だからまあこいつはほっといても大丈夫だな。ただしこいつが何も考えてないおかげで、クリスがしなくてもいい苦労をさせられてる。

あとねえ、今これ書くためにちょっと調べたら、エースはキーファー・サザーランドがやってたのね。イッケメエエエン。

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翌日、子供たちは途中で近道したらヒルにたかられたりと大騒ぎしながらも目的地━━死体のある森にたどり着きますが、そこでやってきたエースとアイボールに遭遇。ガタイもでかいし喧嘩慣れもしているうえ、頭も切れるエースにずっと敵わなかった子供たちは、この困難をどう乗り越えるのか?

そこはまあ、ご覧いただいてのお楽しみとしても、アメフトチームのキャプテンで、不良のエースですら一目置いていた兄ちゃんこそが、いや、そんな最高な兄ちゃんを亡くしたという事実が、実はゴーディが乗り越えなければいけない壁だったのかもしれない。自分の顔を見ると兄ちゃんの話しかしない町の人間、いつまでもいなくなった長男しか見ていない親、そういう全員が抱えている兄ちゃんの記憶を、いかに蹴り飛ばしていくか。

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この4人を見てると、子供のうちは一緒に旅をしてちょっと大きくなれるような気がしたけど、大人になると、ああ子供はちゃんと見守って関わってやらないとダメなんだなと思ってしまう。そんな映画です。

 

この4人の子供たち、ラストでそれぞれのその後が語られますが、クリスがすげえがんばって、兄貴みたいにはならねえと強く思っていたのがよくわかるよねえ。

がんばったけどダメだった子、がんばりが報われた子、手の届くところで地道にやっていく子、それぞれのその後が明暗を分ける様が、大人になること、生きていくことを端的に物語っていて、それが切ないんだ。これがあるからこそ、いまだに残る作品になっているんですよ。

 

これからこの映画に出逢う子供たち。

いいか、俺のような薄汚れた大人にはなるんじゃないぞ。

おっさんとの約束だ。