名画座テアトル犬小屋

雑種犬が観た映画について書く場所。観たことのない映画で遊んだり、何度も観た映画についてしつこく語ったりするめんどくせえ、洗ってない犬の臭いがするブログ。

第1回 「映画刀剣乱舞−継承−」

 

8月に入った途端にクッッソ暑くなったので「砂の器丹波哲郎版を観ようと思ったんだけど、冒頭でなんか違う、としっくりこなかったので変更。

気がつくとこれを再生していました。

聞いて笑え! ここで最初に何をやるか、散々迷って結局コレだ!

「映画刀剣乱舞−継承−」。今回はこれで行く。誰が何を言おうとやる。決めた。うちの近侍は出てないけどな!(←近侍は御手杵君)

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ということで、ここは小屋主の好き勝手によって運営される名画座なので、初回から好きにやらせてもらいます。なんかの間違いでうっかり入っちゃった方、犬にでも噛まれたと思って諦めてください。なにせ小屋主はほら、雑種犬(狂犬病予防接種済)なので。

 

まず冒頭で、審神者と刀剣男士、時間遡行軍との相関をさり気なく紹介しながら、映画本編のメインテーマである本能寺の変と信長を見せる演出の巧みさ。

一見、ただただイケメン並べてるだけに見えるでしょ? ただの2.5次元映画だと思ってるでしょ?

残念でした! 日本で「アヴェンジャーズ」に肩を並べるものを作ろうと思ったら、プリキュア刀剣乱舞しかないよ。実際。

しかも刀剣乱舞がメインに据えているのは歴史。歴史に絡んだ来歴を背負う刀剣男士だからこそ、過去を守ることで人間が「未来を選ぶ」選択をする行為・機会そのものを守り可能性を担保する。

一方の時間遡行軍が、異形じみた容姿で、およそ言葉など伝わらなさそうな、意思の疎通がまるでできなさそうな雰囲気なのは、あれはもしや、たらればで後悔のもとを修正したいというよりは、過去を否定することで現在はもちろん未来も人間も世界も否定し、とにかく何もかも壊したい消したい、それしかないからコミュニケーションすら取ろうとも思っていないし取らない。軍としてまとまってるのは、単に目的を同じうする同志だから云々というよりは「群体」みたいなもんだからなのかもしれない。カツオのエボシみたいな。

 

いや待て。これもう「アヴェンジャーズ」超えてねえか?

あちらはほら、まずキャラクターごとにシリーズがあって、大概その第1作目は主人公がどんな奴なのかという紹介をするだけで終わってるんだけど、この映画、見ただけ、他のキャラクターとのやり取りだけで誰がどんな子なのか、仲間との間の立ち位置がどうなのかがすぐわかるし、しかもどでかい事件を絡めることで、しっかり命題を提示してもいるし、アクション、歴史ミステリ、人間ドラマ、その他複層的な観方もできる。

まさか日本の映画で、こんなに何度でも違う楽しみ方をできる作品が、押井守作品以外から出てくるなんてな! こいつは驚きだ! ってうちの鶴さんも言ってた。

この映画、信長に山本耕史、秀吉にヤッシーと配役が豪華なんだけど、ただのキャラクター映画だったらオファーしても出てはもらえなかったと思うんですよ。作品のテーマがすげえ野心的だからこそ実現した配役だと思いますよ。

 

それにしても、実写版本丸の薬研はちゃんと名医な感じしませんか。うちのマッド漢方医みたいな、ひとり731部隊な感じとまるで違う。みんなすげえちゃんとしてるな実写版本丸! うちの三日月じーさん、こんな風にシュッとしてるのは、若いねーちゃんと遊ぶときぐらいじゃないのか。

 

いや、本当にこの映画すげえぞ。

審神者だからっていう贔屓目じゃない。

謎に裏切り、友情、謀略、野心、敬愛、価値観の逆転、それらを踏まえた上で「何を守りたいのか」「何に価値を見出すのか」と問いを突きつける。劇中で問うもの問われるものを通して、観ている我々にもまた、同じ問いを投げかける。そういう映画になっています。

観てくれ。未見の方、騙されたと思って観てくれ。

特に普段歌舞伎とか観てる方、クライマックスですべてがひっくり返るちゃぶ台返し展開は、相通ずる快感原則があると思いますよ。

 

とにかく観てくれ。観ろ。

薬研と不動君は見るからに短刀な軽業師系のアクションだし、鶯丸の体捌きは自然体が極まってシステマを思い出すし、見どころは何度観ても新たに発見できるから! そういう映画だから!

押井守作品以外の、日本では数少ない「100回観られる映画」。

何度でも言う。騙されたと思って観てください。

俺の求めているものがほぼほぼ網羅されている奇跡の1本だ。

 

 

 

ちなみにこの映画、二刀開眼と真剣必殺してるのはスタッフロールで流れる西川ニキと布袋寅安にいやんの主題歌なの、実に趣深い。

最後の最後までひとネタぶっ込む、油断ならぬ作品。

よっしゃ、金たまったら円盤買うぞ。